30分ごとに「社長、お疲れさまです」と話しかけてくるMac ― メール秘書
数字はAIに書かせない。AIに任せるのは、話し言葉に整えるところだけ。
沖縄でスマホ修理店を8店舗やっているスマホ119の、社長のMacの話です。

30分ごとに、Macが話しかけてきます。「社長、お疲れさまです。21時の定時報告です。」そこから本日の売上と客数、月末の着地見込み、前回から届いたメールの内訳、入った予約、そのほかのメールの要点を読んで、「以上です。お疲れさまでした。」で終わる。
画面を見なくても、店の今が耳から入ってくる。それだけの道具です。
1最初に困ったのは、声と中身の両方だった
もともとこのMacでは、受信箱のスパムを自動で分ける仕組みが動いていました。そこに読み上げを足したのが始まりです。
困ったことは3つありました。Mac標準の読み上げは機械的で、30分ごとに聞くのがつらい。「要確認5件」のような分類名を読まれても、何が届いたのか分からない。そして、AIに自由に話させると、社内の自動通知について推測でよく分からないことを言い出す。
声はGoogleのGemini TTSに替えました。中身のほうは、AIに任せる範囲を削る方向で直しています。
2数字は、AIに書かせない
報告の原稿は、まず決まった文で組みます。売上の数字は売上レポートのメール本文から取り出して、「本日の売上は◯円、客数は◯名です」という型に入れる。AIの出番はそのあとで、この下書きを秘書の話し言葉に清書するだけです。
清書をそのまま信じてはいません。清書の前と後で原稿に出てくる数字を比べて、1種類でも欠けたり増えたりしていたら、清書を捨てて下書きのまま読みます。AIへの指示にも「数字・金額・件数・時刻は、下書きの書き方のまま一字一句変えない」と書いてある。それでも照合は外しません。
売上の取り出し方は、過去の売上レポート56通で確かめました。取り出した本日売上は、件名に書かれた合計と全件一致しています。
報告の中身を、誰が作っているか
| 報告の部分 | 作り方 | AIの役目 |
|---|---|---|
| 売上・客数・着地見込み | 売上レポートの本文から取り出す | ◎書かない(照合だけ) |
| メールの内訳 | 中身で数え直す(売上レポート3件、社内通知2件…) | 書かない |
| 予約 | 本文から店舗・来店日時・機種・ご相談だけ | ◎名前と電話番号は読まない |
| そのほかのメール | 1通を1文に | 要約する(推測はしない) |
| 全体 | 決まった文で下書き | 話し言葉に清書(数字が崩れたら捨てる) |
3「要確認3件。」は、中国語で読まれた
声にしてから分かった問題もあります。
「要確認3件。」のような、漢字と数字だけの短い文。これをGemini TTSで声にすると、8回中8回、中国語の発音で読まれました。日本語として読んでほしい文なのに、中国語の読み方になる。
かなを入れた形に書き換えると、8回中8回、日本語で読まれるようになりました。それ以来、作った声は毎回、文字起こしのWhisperに言語を判定させてから保存しています。日本語だと判定されなかった声は、保存しない。
ここで1つ気をつけたのが、文字起こしのほうに「日本語です」と教えないことでした。教えてしまうと、中国語で発音された声まで日本語として書き起こされて、間違いに気づけなくなる。言語はあえて判定させています。
4名前と電話番号は、読まない
予約のメールには、お客さまの名前と電話番号が入っています。でも秘書は読みません。本文から取り出すのは、店舗・来店日時・機種・ご相談の4つだけ。
声は画面と違って、そばにいる人にも聞こえます。原稿に入れなければ、読み上げで漏れることもない。予約が入ったことと中身が分かれば足ります。
予約を知らせるLINEの通知枠が残り20通以下になったときだけは、「まもなく上限です」と添えます。気づかないうちに通知が止まるのが一番困るので。
外部から届いたメールは1通1文で要約します。差出人の名前とドメインが合わないような怪しいメールは、「〜を名乗る不審なメールです」と伝える。試した8通は、8通とも意味の通る1文になりました。
5途切れない1本の声にする
最初は文ごとに声を作ってつないでいたので、文と文のあいだに無音が入っていました。今は清書した原稿を1本の音声にして読ませています。
ある日の21時の報告は36.9秒で、読み上げ代は約4円でした。今月いくら使ったかは、メニューバーにいつも出しています。
「スマホ119」を「スマホいちいちきゅう」と読ませるように、声にする直前には読み方の辞書を必ず通します。いまは42行。沖縄の地名や機種名が並んでいます。
メニューバーからは、読み上げと通知のオン・オフ、1時間から翌朝まで黙らせる設定、声の選択、試聴ができます。
6正直に言うと
話し方に個性をつける「キャラ」の機能も作りかけていて、53種類の話し方を用意しています。ただ、これはまだ試作で、既定では切ってあります。定時報告にどう乗せるかは、まだ決めていません。
文字起こしの検査も、見ているのは言語だけです。ログを見ると、「定時報告」が「提示報告」と書き起こされていました。検査が見ているのは言語だけなので、声が読み違えたのか、書き起こしが聞き違えたのかまでは区別できません。
7まだ分からないこと
30分という間隔が正しいのかは、まだ分かりません。短くすれば気づくのは早くなるけれど、そのぶん話しかけられる回数が増える。売上が動く時間帯と、そうでない時間帯で間隔を変えたほうがいいのかもしれない。
しばらく使ってみて、何回目の報告から聞き流すようになるのかを見てみます。変えたら、また書きます。
作品の概要はメール秘書の作品ページに、ほかの開発記録はブログ一覧にあります。お店のメールや売上の報告を声にしたい、という相談はお問い合わせからどうぞ。
この記事を書いた人
NextCode(沖縄県宜野湾市)は、iOSアプリ・ホームページ/LP・NFCデジタル名刺・AI業務自動化を作っている開発スタジオです。ここで書いているのは、実際に作って公開したものと、その過程で詰まったことだけです。
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