AIで描いた漫画CMを「生きて見える」ようにした記録。スマホ画面のずれは19.5pxから1.1pxへ、動く人と犬はのべ13から25へ
話している1人だけが動くと、隣の人は人形に見える。直すのに要ったのは派手な演出ではなく、まばたきと呼吸でした。
AIで描いた絵を並べて、声とBGMを付けた「ショート漫画のCM」を作っています。自社サービスのスタンプ119(写真からLINEスタンプを作るサービス)の宣伝用です。
ただ、出来上がりを通しで見ると、どこか紙芝居っぽい。原因を探したら、大きく2つありました。1つは、登場人物が持っているスマホの画面に、あとから重ねた画面がきちんと収まっていないこと。もう1つは、話している1人しか動いていないこと。
今回はこの2つを、見た目の印象ではなく数字で比べてから直しました。見比べるための動画も作ったので、そのまま載せます。
この記事に出てくる人物・犬・部屋は、すべてAIで描いた絵です。実在の人物は出てきません。
1スマホの画面を、描かれた画面にぴったり合わせる
CMの1カット目は、女性が犬を抱いて、出来上がったスタンプをスマホで見せる場面です。絵の中のスマホもAIが描いたもの。その画面の上に水色の画面とスタンプを重ねて、スタンプがポンと飛び出す動きを付けています。
問題は重ね方でした。これまでは、画面の四隅の位置をAIに答えてもらい、その四角形を塗っていました。AIの答えは少しずれます。右の縁では、水色がスマホの黒い縁(ベゼル)の上に19.5px乗っていました。1080pxの動画でこの量は、見れば気づきます。
そこで作り方を4つ用意し、絵・声・カメラの動きはそろえたまま、画面の扱いだけを変えて比べました。どれも5.84秒の同じカットです。
四隅をAIの答えから決めて、四角く塗る。右の縁で19.5pxはみ出し、右上には暗い帯が残ります。
絵の画素から、画面の縁・角の丸み・上の切り欠きを測り直して、その形のとおりに塗る。いちばんずれた所(右上の角)でも2.4pxです。
画面は塗り直さず、背景が透明のスタンプだけを重ねる。はみ出しは0。ただ、元の絵の画面に犬の写真が描かれていて、犬が2匹重なって見えます。
A′と同じ形で切り抜き、切り替えと飛び出しにバネのような動きを付けました。縁の合い方はA′と同じです。
角と縁を4倍にして見る
完成動画の0.3秒目(スタンプが飛び出す前)を切り出して、左上の角・右上の角・右の縁を4倍にしました。黒い縁の内側に、水色がぴったり入っているかを見てください。




測った数字
175コマすべてで、描かれた画面の縁と、重ねた画面の縁の差を測りました。C(Remotion)の縁のずれは、どの場所もA′と同じでした。単位は1080×1080の動画の画素です。「はみ出し」は水色が黒い縁に乗った幅、「すき間」は元の画面が見えている幅です。
縁のずれ(はみ出し/すき間・単位px。Aは直す前、A′は当て直した後。上の辺は切り欠きのあたり。◎は良い値、✕は目で見て分かるずれ)
| 場所 | A(前) | A′(後) |
|---|---|---|
| 上の辺 | ✕0/29.2 | ◎1.2/0.5 |
| 右 | ✕19.5/2.2 | ◎1.1/0.5 |
| 下 | 2.0/0 | ◎0.2/1.0 |
| 左 | 3.8/2.2 | ◎0.6/0.5 |
| 右下の角 | ✕18.0/0 | ◎0.3/0.2 |
4つの作り方のまとめ(◎はその行でいちばん良い値)
| 項目 | A | A′(採用) | B | C |
|---|---|---|---|---|
| いちばん大きいずれ | ✕29.2px | ◎2.4px | — | ◎2.4px |
| 画面の外に塗った画素 | ✕8,710 | 258 | ◎0 | 259 |
| 作る時間(1カット) | ◎5.0秒 | ◎5.0秒 | 5.4秒 | ✕13.3秒 |
いちばん大きいずれの場所は、Aが上のすき間、A′とCが右上の角です。Bは画面を塗らないので、縁のずれは測れません(表では「—」)。
意外だったのは、C(Remotion)で縁がきれいに合ったのが、道具のおかげではなかったことです。CでもA′と同じ「絵の画素から縁を測り直す」処理を使っていました。ずれを直したのは測り方のほうで、道具を変えただけでは縁は合いません。
動きのなめらかさはCがいちばんでした。正直、かなり迷いました。ただ、作る時間が約2.7倍になり、サーバー側の準備も要ります。見た目の差が小さいうちはA′で十分と判断して、A′を採用しました。
B(スタンプだけ)は、はみ出しが絶対に起きない安全な方法です。でも今回の絵のように、画面の中に写真や文字が描かれていると重なって読みにくい。画面が無地の絵のときだけ使える、という結論です。
2映っている全員を動かす
2つ目の問題。これまでは、話している1人だけが口パクしていました。聞いている人や犬は、まばたきもせずに止まったまま。1枚の絵に2人いると、片方が人形のように見えるんですよね。
そこで、映っている全員に次の動きを付けました。
付けた動き
| 動き(誰に) | 中身 |
|---|---|
| 口パク(話し手) | 声の大きさで「閉じる・半分・開く」を切り替える。横顔でも、横顔用の口を描き直して動かす |
| まばたき(人も犬も全員) | 人ごとに違う時刻。2人が同じ瞬間に目を閉じないよう、5コマ以上ずらす |
| 呼吸(全員) | 肩から上だけが、3.4〜4.4秒でゆっくり上下する(最大2px、犬は1.2px)。画面全体は動かさない |
| 話し始めの頭の動き(話し手) | 声の出だしで頭が2.5px沈んで戻る。驚きの台詞では逆に少し上がる |
| うなずき(聞き手) | 相手の言い終わりに合わせて4pxうなずく(2回まで) |
| 笑い(聞き手) | 笑う場面では、肩が小さく3回弾む |
| 漫画の記号(話し手の顔の横) | 驚きは「!」、笑い声は「♪」、ため息は汗。見出し・字幕・スマホ・ほかの人の顔に重なる所には出さない |
いちばん気を付けたのは、聞いている人の口です。相手の声に合わせて聞き手の口まで動くと、腹話術のようになって一気に不自然になります。聞き手の口は、声には合わせません。
前と後を並べて見る
横に並んで見えるときは左が直す前、右が直した後。縦に並んで見えるときは上が直す前、下が直した後です。呼吸やうなずきは小さな動きなので、音を出して、動画を大きくして見てください。
前は女性が止まっていました。後は呼吸と、笑って肩が揺れる動きが入ります(目を閉じて笑った顔で描かれているので、まばたきはしません)。
男性と犬が、それぞれ別の時刻にまばたきします。男性は女性の言い終わりでうなずきます。
前は横顔だったので、全員が止まっていました。後は横顔の口パクとまばたき、犬のまばたき、全員の呼吸が入ります。
おじいちゃんが呼吸し、女性の言い終わりでうなずきます。女性の横にハートの記号が出ます。
赤ちゃんもまばたきします。写真立ての中のおじいちゃんは、写真なので動かしません。
横顔の口パクと、記号の出方
横顔のときも、横顔用の口を描き直して口パクさせています。台詞の気持ちに合わせて、顔の横に漫画の記号も出ます。見る場所は、それぞれの説明に書きました。
男性の口元を見てください。前は横顔なので止まっていました。後は声に合わせて口が開き、まばたきもします。
終わりぎわ、男性の顔の右横に♪が出ます。
「はやっ!」のところで、女性の右上に!が出て、頭がわずかに上がります。
顔だけを描き替える
動かすために、1人ずつ顔の部分だけを描き替えています。目を閉じた顔、口を閉じた顔、半分開いた顔。描き替えた絵は検査にかけて、元の顔からずれたものは使いません。

数字で見ると
直す前と直した後(「15」は絵のカットの数。人数はカットごとに数えたのべ人数)
| 項目 | 前 | 後 |
|---|---|---|
| ペット編:動くカット | 13/15 | ◎15/15 |
| ペット編:動く人・犬 | 13人 | ◎25人 |
| ペット編:口パクするカット | 12 | ◎15 |
| 家族編:動くカット | 14/15 | ◎15/15 |
| 家族編:動く人 | 14人 | ◎17人 |
| 家族編:口パクするカット | 13 | ◎14 |
スマホの画面を録画したカットと、最後の案内の画面は、前と同じです。
口パクが本当に話し手に付いているか
全員を動かすついでに、これまでの口パクが正しい人に付いていたかも確かめました。CM6本・絵コンテ86カットを1カットずつ見て、別の人の口を動かしていたカットは0件でした。横顔の口パクは4カット中4カットで成功。一方、口の描き替えが検査に落ちていた6カットを描き直してみたら、成功は1カットだけ。残りの5カットは口を動かさず、まばたきと呼吸だけを入れています。
3正直に言うと
よくなった分、1本を作る時間は延びました。ペット編は125秒から225秒、家族編は121秒から277秒(初回の準備42秒を含む)です。
まだ分からないことも残っています。
- スマホ画面の当て直しは、この1カットで比べたあと、演出が入る全10場面で確かめてから本番に入れました(場面ごとのいちばん大きいずれは、3.3〜31.3px から 0.9〜10.3px へ)。この10場面に無い絵、たとえば明るい色のスマホの絵でうまくいくかは、まだ確かめていません
- 右上の角は丸みを測りきれず、下の角の丸みを借りました。最大2.4pxのずれはここです
- この記事の動画は、比べるために作った試作の版です。本番のCM6本は、スマホ画面の当て直しと全員の動きの両方を入れて作り直し、YouTubeの動画も差し替えました(ペット編はこちら)
- 笑った口の描き替えも用意しましたが、今回の6本では一度も使われませんでした。笑う場面の聞き手が、もともと口を開けて描かれていたためです
AIで作る映像は、1枚1枚の絵はきれいでも、つなげると「止まっている感じ」が出やすい。そこを埋めたのは、派手な演出より、まばたきや呼吸のような小さな動きでした。
この記事を書いた人
NextCode(沖縄県宜野湾市)は、iOSアプリ・ホームページ/LP・NFCデジタル名刺・AI業務自動化を作っている開発スタジオです。ここで書いているのは、実際に作って公開したものと、その過程で詰まったことだけです。
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