介護アプリは「家族11人」で設計すると壊れる ― CareFam
“薬のリマインダーが、亡くなる前日にも鳴り続ける。その画面を想像した時点で、作り直しが決まりました。”
親の介護を、離れて暮らす家族で共有するアプリを作っています。CareFamという名前です。

最初の設計は単純でした。家族グループが1つあって、その中に親が何人かいて、家族全員が全部見える。それで足りると思っていたんですよね。

介護アプリは「家族11人」で設計すると壊れる ― CareFamを4コマ漫画にしたもの
足りませんでした。最初の設計は、紙の上で11人を動かした時点で捨てています。
111人の家族を紙に書いてみた
実装に入る前に、想定する家族を具体的に書き出しました。父は要介護2、母は要支援1で別居。子どもが4人、孫が4人、孫の配偶者が1人。合計11人です。

11人の家族を紙に書いてみたを表すイラスト
この11人を「家族」という1つの権限に放り込むと、何が起きるか。
海外に住む次男には、日本時間の朝8時の服薬通知が現地の深夜2時に届きます。父と疎遠な次女には、見たくない父の情報まで流れてくる。同居して食事介助をしている孫の妻には、家族の介護費用の内訳が見えてしまう。
訪問看護師や主治医を招待したら、家族のチャットに医療者が混ざります。守秘義務の面でまずい。
4タイプ全員が、それぞれ別の理由で使うのをやめる。その結論が設計レビューの1行目に「NO-GO」として書かれました。
「家族=全員同じ権限」で作った場合と、作り直した後
| 場面 | 最初の設計 | 作り直した設計 |
|---|---|---|
| 海外在住の次男 | 全通知が深夜に鳴る | ◎担当する親の通知だけ受け取る |
| 父と疎遠な次女 | 父の情報も強制的に見える | ◎母だけを担当にできる |
| 同居する孫の妻 | 介護費用の内訳が見える | ◎役割ごとに見える範囲を分ける |
| 訪問看護師・主治医 | 家族チャットに混ざる | ◎共有リンクで記録だけ渡す |
| 兄弟の意見対立 | 長男が1人で削除・招待解除できる | ◎共同オーナー制 |
2作り直したのは「誰が誰を担当するか」
直したのは機能ではなく、データの持ち方です。

作り直したのは「誰が誰を担当するか」を表すイラスト
家族と親の間に「担当」という関係を1枚挟みました。長男は父と母の両方、長女は母だけ、というように。通知も、見える範囲も、この担当を基準に決まります。
テーブルは最終的に19枚になりました。担当の割り当て、家族外の医療者へ渡す共有リンク、緊急時の記録、介護費用、書類。レビューで「介護の中核が4つ全部未設計」と言われた分を、まずデータの器として用意した形です。
器を先に作った理由は、あとから足すとデータの引っ越しが必要になるからです。介護の記録は、引っ越しのたびに何かが欠けます。それだけは避けたかった。
34言語を機械翻訳しなかった
日本、イタリア、スペインにまたがる家族を想定しているので、日本語・英語・イタリア語・スペイン語の4言語です。

4言語を機械翻訳しなかったを表すイラスト
翻訳キーは327個。4言語で1,308項目になります。
機械翻訳で一気に埋めることは、しませんでした。介護の言葉は、直訳すると冷たくなります。「服薬を確認してください」と「お薬、飲めましたか」は、同じ意味で、届き方が違う。1言語ずつ、話しかける文になっているかを見て入れています。
正直に言うと、これが一番時間を食いました。機能を1つ足すたびに4回書く。途中で「英語だけ先に出そうか」と迷った日もあります。でも、海外の家族が「翻訳ソフトの文章だ」と感じた瞬間に、そのアプリは家族のものではなくなると思っていて。迷いは捨てました。
4亡くなったあとの画面
設計レビューで一番刺さった指摘は、機能の話ではありませんでした。

亡くなったあとの画面を表すイラスト
「薬を飲みましたか」というリマインダーが、亡くなる前日にも鳴り続ける。亡くなったあと、グループを削除する以外に道がなく、母の介護データまで一緒に消える。
その画面を想像した時点で、作り直しが決まったようなものです。
親の状態に「逝去」を持たせ、通知を止め、記録は閲覧専用で残す。もう1人の親の記録はそのまま続く。この流れは今、データ側とアプリ側の2か所に入っています。
5まだできていないこと
緊急時のワンタップ通報は、データの器だけあって、アプリの画面がまだありません。入院中に服薬通知を一時停止するモードも未実装です。

まだできていないことを表すイラスト
そして、11人家族で本当に使ってもらう検証は、まだこれからです。紙の上で11人を動かして壊れた場所を直しただけで、本物の家族が使ったときにどこが壊れるかは、分かっていません。
そこが分かったら、また書きます。
作ったものは制作実績に並べています。CareFamの詳細には、機能の一覧を置いてあります。家族で使う仕組みを考えている方は、こちらから声をかけてください。
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CareFamの詳細を見るこの記事を書いた人
NextCode(沖縄県宜野湾市)は、iOSアプリ・ホームページ/LP・NFCデジタル名刺・AI業務自動化を作っている開発スタジオです。 ここで書いているのは、実際に作って公開したものと、その過程で詰まったことだけです。
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