セリフの文字をどこに置くかで、3回決め直した ― 声つき漫画を作るshort-maker
文字をAIに描かせるか、あとから重ねるか。設計図で決めたことが、手元の道具ひとつでひっくり返った。
short-makerは、台本やアイデアから、声のついた漫画の動画を作るWebアプリです。1話は既定で20コマ。コマごとに絵を描き、登場人物ごとに別の声でセリフを読ませ、効果音とBGMを重ねて1本の動画にします。

作り始めたのは2026年6月17日です。最初は「ショート動画を作るアプリ」のつもりでした。ナレーションには、前に作った案内チャットボットの読み上げの声(Gemini TTSのAoede)が気に入っていたので、それをそのまま使うところから入っています。
159分で「動画のアプリ」から「連載漫画のアプリ」へ
音声、キャラクター登録、アイデアから動画までを通すスタジオ。この一式を最初にコミットしたのが11時37分でした。
そして12時36分のコミットで、方針を変えています。設計メモには「PIVOT:漫画ファースト」と書き足し、これは連載漫画を作るアプリで、声やキャラや動画は部品だ、と位置づけを入れ替えました。
連載には全話の大きな筋と、各話で伝える学びを持たせて、1話ずつ漫画にしていく。話の作り方にも決まりを入れました。冒頭を自己紹介で始めない。偶然で解決させない。主人公が前に進むのは、本人が動いた結果にする。各話は、続きが気になるところで終える。
試しに作った連載の第1話は、9コマで67秒。
同じ日の14時32分には「監修」の工程も足しました。台本を別のAIに採点させて、75点に届かなければ1回だけ自動で書き直してから絵に進む。時間もお金もかかる作画の手前に、台本の段階で止まる場所がある、という作りです。
2セリフの文字を、どこに置くか
一番迷ったのはここでした。
作る前の調べものでは、画像生成AIに日本語の文字をきちんと描かせられる、という話に裏付けが取れなかった。なので設計図には「絵に文字は焼き込まず、あとから重ねる」と書いています。
ところが、手元のffmpegには文字を描く機能(drawtext)が入っていませんでした。それで最初の版は、吹き出しのセリフごと、当時のgpt-image-2に絵として描かせています。短い日本語なら、きれいに出たからです。
6月21日には、別の穴に落ちました。動画の頭に題名のカードを付けたのに、サーバー(Railway)で作った動画にだけ出ない。そこで使っていたffmpegの版にdrawtextが入っておらず、エラーも出さずに文字だけが消えていました。手元のMacでは出ていたので、試験では分からなかった。今は起動のたびに、drawtextが本当に使えるかを試してから、使える方のffmpegを選んでいます。
7月13日、吹き出しをやめる選び方を入れました。コマは吹き出し無しで描かせて、セリフは画面の下にテロップとして後から焼く。半透明の紺の帯に白い枠と白い文字で、2行まで。AIが描く吹き出しの文字が崩れることがあり、音を消して見ても読める形にしたかったからです。各コマにはゆっくりしたズームも入れて、紙芝居っぽさを消しています。
翌日には、背景の看板や画面に、読めない崩れた文字がうっすら出ているのが見つかりました。テロップのときは、看板も画面もラベルも白紙かぼかしにする、という指示を足しています。
セリフの文字の置き方(2026年9月時点のコードとコミットから)
| 置き方 | 選んだ理由 | 困ったこと |
|---|---|---|
| あとから重ねる(最初の設計) | 文字をAIに描かせる品質に裏付けが無かった | 手元のffmpegに文字を描く機能が無く、この時は作れなかった |
| 吹き出しごと絵に描かせる(6月〜) | 短い日本語ならきれいに出た | 吹き出しの文字が崩れることがある/枠の外で切れることがある |
| ◎下にテロップを焼く(7月〜) | ◎文字がくっきり読める・音なしでも分かる | 日本語フォントを同梱する必要があった/背景に崩れた文字が出た |
いまは「おまかせで全話作る」経路の既定がテロップです。1話ずつ手で作る画面は、吹き出しを描く設定が既定のまま残っています。
3腕時計を外した日
連載にすると、同じ人が毎回同じ見た目で出てこないと話が成り立ちません。作画では、キャラクターの設定画を参照画像として毎コマ渡し、見た目の特徴も毎回同じ言葉で指示に入れています。
それでも崩れる所はありました。6月17日の21時19分、主人公の腕からスマートウォッチを外しています。コマに描かれる時刻がそろわず、話の中の時間の流れと食い違うからです。
直すのではなく、描かせないことにした。どのコマにも時計や時刻の表示を出さない、と指示に入れました。ノートパソコンも、画面が裏を向く・閉じている・デスクトップに化ける、という崩れ方をしやすいので、開いて画面がこちらを向いた銀色のMacBook Air、と毎回書いています。
6月19日には、犬の犬種や車の色、服がコマごとに変わる問題に手を入れました。毎コマ必ず入れる一貫性の決まりと、連載ごとに書き換えられる固定メモ。このときのコミットには「生成モデルは100%ではない」とも書いてあります。
4作画が遅かった理由は、送っていた画像の大きさ
速さでも何度かつまずいています。
6月の時点で、1本に約6分かかっていたのを、画像と音声を並列にして約2.5分にしました。安全フィルターで弾かれたコマを、同じ指示のまま最大9回ほど作り直していたこともあります。1コマに3〜4分。同じ文なら何度やっても弾かれるので、穏やかな言い回しに書き換えて1回だけ試す形に変えました。
9月14日、作画をすべてgpt-image-2.5-flareにそろえました。それまでは、費用を抑えるためにGeminiの画像生成で描く経路も残していた。そろえたら、今度は1コマ44〜83秒かかった。
同じ台本の4コマで切り分けると、原因は2つでした。参照つきの作画で画質を指定しておらず、既定のautoで重い出力になっていたこと。もう1つは、参照画像を原寸のまま、1枚0.5〜1.3MBを最大4枚送っていたこと。
画質をmediumと明示して、参照画像は長辺768pxのJPEGに縮めてから送るようにしました。1枚あたりの出力トークンは1,756から439へ。8枚同時に描いても1枚15〜18秒で伸びなかったので、同時に描く枚数を4から8に上げています。
5正直に言うと、まだ分からないこと
設計図には、キャラクターの見た目がどれくらい崩れるかを自分で測ってから本実装する、と書きました。候補を何枚か描いて、参照画像に一番近い1枚をAIに選ばせる案もあった。どちらも、まだやっていません。今の一貫性は、指示の書き方と参照画像に頼っています。
画質をmediumに落とした件も、「絵の質は目視で同等」というところで止まっています。見比べたのは自分の目だけ。
吹き出しとテロップ、どちらが最後まで見てもらえるのかも、測っていないんです。読みやすさを理由に切り替えましたが、見る人にとってどうだったかは分かりません。
6次に何をするか
9月14日には、シナリオの欄にURLを書くと、そのサイトの中身を読んで物語に入れる機能も足しました。nextcode.ltdで試すと、4ページ・13,412字を読み取って、実在の情報が企画に入りました。
引き継ぎのメモに残している次の候補は2つあって、コマを動く映像にするか、ログインと履歴と課金を整えるか。どちらを先にやるかは、まだ決めていません。決めたらまた書きます。
作品の概要はshort-makerの作品ページに、ほかの開発の記録はブログ一覧にまとめています。自分の店やサービスを声つきの漫画で紹介したい、という相談はお問い合わせからどうぞ。
この記事を書いた人
NextCode(沖縄県宜野湾市)は、iOSアプリ・ホームページ/LP・NFCデジタル名刺・AI業務自動化を作っている開発スタジオです。ここで書いているのは、実際に作って公開したものと、その過程で詰まったことだけです。
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