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開発事例

機能を3つに削るまでに、2つ捨てた話 ―「買いノート」

機能を3つに削るまでに、2つ捨てた話 ―「買いノート」

多機能なメモアプリはもうある。棚の前で1秒で使えるものが無かった。

スーパーの棚の前で、スマホを見ながら固まっている人をよく見ます。自分もそうでした。

買いノートの画面

メモアプリのリストを開いて、買ったものを消そうとして、長押しして、削除メニューが出て、間違えて別の行を消す。かごを持ったまま片手でやる作業ではないです。

右手にかご、左手にスマホ、後ろからカートが来る。この状態で長押しの0.5秒を待てる人、いないんですよね。

この記事を、ショート漫画にしました(タップで再生・音が出ます)

機能を3つに削るまでに、2つ捨てた話 ―「買いノート」を4コマ漫画にしたもの

機能を3つに削るまでに、2つ捨てた話 ―「買いノート」を4コマ漫画にしたもの

普段はスマホの修理店もやっていて、カウンター越しに人の指を毎日見ています。困っている人の指は、押したい場所の手前で一度止まる。棚の前で固まっている指も、同じ動きです。

買いノートは、そこだけを直すために作りました。

最初から小さく作るつもりだったのかというと、違います。むしろ逆でした。

1できることは3つだけ

入力して+を押す。大きな枠を押してチェックする。指で左右にめくってお店を切り替える。それだけです。

入力・チェック・指でめくるの3つだけに絞った買いノートの画面

入力・チェック・指でめくるの3つだけに絞った買いノートの画面

入力欄はフォーカスが残るので、思いついた順に10件でも20件でも続けて打てます。冷蔵庫を開けたまま「牛乳、卵、味噌」と口に出しながら打つ。並び順はそのまま。

お店ごとにページを分けたのは、自分の買い物がそうだったからです。スーパーとホームセンターは、頭の中でもう別の紙に書かれている。混ぜて並べ替えるより、めくったほうが速い。

この3つに落ち着くまでに、作ったのに捨てた機能が2つあります。

作ってから捨てたもの

機能捨てた理由
リアルタイム共有アカウントとログインが必要になる。買い物メモにそこまでの信用は預かれない
予算・合計金額の管理値段を入力する手間が、メモを書く手間より重くなった
カテゴリ分類お店ごとにページを分ければ、分類そのものが要らなくなった

共有は最後まで悩みました。家族に買い物を頼む場面は確実にあるからです。

実装も一度は動くところまで持っていきました。夜に一人で書いて、二台の端末に同じ行が同時に増えた瞬間は、素直に嬉しかったです。ただ、同期にはアカウントとログイン画面が要る。買い物メモを書くために新規登録してください、という画面を、人に見せられる気がしませんでした。

同期まわりのコードは、作っては消し、作っては消し。消すときはいつも指が止まりました。動くものを自分の手で消すのは、何回やっても慣れないですね。

結局、その時点の残りをQRコードか共有シートで渡すだけにしました。頼む側が欲しいのは同期ではなく、「これ買ってきて」が伝わることでしたから。

予算のほうは、あっさり終わりました。1品5秒で打つとして、10品で50秒。レジ前でその50秒を払う人はいません。私も払いませんでした。

2残した中で、一番地味で一番効いたもの

チェックの当たり判定です。

行全体ではなく左の大きな枠だけがチェックに反応するようにしたところ

行全体ではなく左の大きな枠だけがチェックに反応するようにしたところ

最初は行全体を押せるようにしていました。品名を読もうとして触れただけでチェックが付く。買い物中はこれが致命的でした。

自分のテスト中に本当にやりました。牛乳のところを読み直そうとして触れて、チェックが付いて、行が消える。棚の前で「あれ、卵はもう買ったんだっけ」と固まった、あの数秒。あれが全部です。

いまは左の大きな枠だけが反応します。品名をいくら触っても何も起きない。文字にすれば1行の仕様ですが、直してから自分の使用回数が明らかに増えました。

日常の指は、こちらが思うよりずっと雑です。というより、雑でいい。修理の受付を12年やっていれば、そこは嫌でも分かります。Appleの言う最小44ptは本当に最小で、片手・かご持ち・薄暗い店内では、最小で作った場所を普通に外します。枠は親指の腹で押す前提の大きさにしました。

3文字の大きさは「設定」ではなく機能

薄暗い店内の棚の前で、標準サイズの文字は読めません。老眼の入る年齢なら尚更です。

文字を大きくして薄暗い店内でも読めるようにしたリスト

文字を大きくして薄暗い店内でも読めるようにしたリスト

店には年配のお客さんも多くて、文字が読めないという相談も普通に受けます。設定を開いて大きくしてお返しすると、その場で表情が変わる。あれを何度も見ていると、文字サイズを設定の奥に隠す気にはなれません。

「大きい」「特大」を用意して、アプリ全体の文字が実際に大きくなるようにしました。1画面に5行しか入らなくてもいいから読める方を選んでいます。

iOS標準の文字サイズ設定に乗る手も先に試しました。全体を持ち上げると崩れる画面が出て、アプリに3段階だけ持つほうが早かった。きれいなのは前者。速かったのは後者でした。

スクロールが増えるのは承知の上です。読めないリストは、0行のリストと同じなので。

4カメラは思ったより使われている

英語だけのビンや、雑誌で見かけたもの。カメラで撮ると、写った文字をそのまま品名にします。

カメラで撮った文字をそのまま品名として取り込むところ

カメラで撮った文字をそのまま品名として取り込むところ

使っているのはiOSに最初から入っている文字認識です。画像をサーバーへ上げないので、通信の弱い店の奥でも動くし、後ろに写り込んだ人がどこかへ送られることもない。

正直、「あったら面白い」程度の気持ちで入れた機能でした。実際は自分が一番使っています。

苦手もはっきりしています。印刷された文字はよく拾いますが、走り書きを撮ると平気で別の言葉になる。自分のメモを撮って、知らない品名が並んだこともありました。手書きは、まだ手が回っていない。

5この話には、たぶん続きがあります

アプリ内課金もサブスクも広告も入れていません。ページ数の制限もありません。つまり、このアプリが稼いだ金額は0円です。

課金も広告も入れないままでいいのか考えているところ

課金も広告も入れないままでいいのか考えているところ

それでいいのか、まだ答えは出ていません。ただ、機能を絞れたのは課金の導線を作らなかったからでもあります。ここで課金しようと決めた瞬間に、課金するための機能を足したくなるので。

広告を1本入れれば数字は動くのかもしれません。でも、棚の前で1秒で使うアプリの真ん中に広告が乗った時点で、このアプリが直そうとした問題が戻ってきます。だから今は入れない。半年後の自分が同じことを言えているかは、正直、自信がないです。

怖いのは売れないことより、売れないまま自分が飽きることです。作ったものは制作実績に100本単位で並べていて、当たらないものの方が多い。その多くは失敗したというより、私が先に見なくなっただけでした。

だから、お願いがあります。買い物のたびにメモアプリと戦っている心当たりがあるなら、一度、机の上ではなく棚の前で買いノートを開いてみてください。そこで指が迷った場所を、よかったらお問い合わせから教えてください。使いにくいと言われる場所は、だいたい私が机の上でしか試していない場所です。

捨てた共有機能をQRコードに置き換えた話は、実装の中身まで整理がつきました。同期しないのに困らなかった理由が、作ってからやっと分かったので、そのうち書きます。

たぶん次も、動くものを自分の手で消すことになります。そのとき指が止まるのも、もう分かっています。

この記事を書いた人

NextCode(沖縄県宜野湾市)は、iOSアプリ・ホームページ/LP・NFCデジタル名刺・AI業務自動化を作っている開発スタジオです。 ここで書いているのは、実際に作って公開したものと、その過程で詰まったことだけです。

お電話でも大丈夫です → 098-959-6119

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