NFCデジタル名刺、配ったあとに何が起きるか
“かざした人が3秒で離脱するなら、それは名刺ではなくただのリンクです。”
NFCの名刺を作りたい、という相談が増えました。「かざすと自分のページが開く」あれです。
作るのは難しくありません。難しいのは配ったあとです。
自分でも一通り配ってみて、思っていたのと違うところで詰まりました。技術ではなく、渡す数秒の空気のほうでした。
私の本業は、沖縄でスマホを直すことです。カウンター越しに、人がスマホを触る手つきを12年ぶん見てきました。だからコードの前に、まず相手の指がどう動くかが気になるんですよね。今回もそこで転びました。
▼ この記事を、ショート漫画にしました(タップで再生・音が出ます)

NFCデジタル名刺、配ったあとに何が起きるかを4コマ漫画にしたもの
1かざした瞬間、相手は片手がふさがっている
名刺交換の場面を思い出してください。立っていて、相手がいて、こちらの顔を見ている。その状態でスマホを見る時間は、長くて10秒くらいです。

名刺交換の場で相手がスマホを見る時間は10秒ほどという場面
体感ですが、こちらが黙ったままだと、相手のほうが気を遣って「あとでゆっくり見ますね」と画面を閉じます。閉じられたら、まず開かれません。
この沈黙、店のカウンター越しに毎日見ている光景とそっくりなんですよね。年配のお客さんに画面をお見せしているとき、こちらが黙っていると、読む時間ではなく急かされた時間になってしまう。
その10秒で何を見せるかが全部で、細かい会社概要を読ませようとすると何も残りません。うちが作るときは、上から3つだけに絞ります。
3つの決め方は単純です。スクロールしないで見える範囲に入るものだけ。スマホの1画面に入らない情報は、無いのと同じ扱いにしています。
かざした直後の画面に置くもの
| 置くもの | 理由 |
|---|---|
| 顔写真と名前・肩書き | 誰だったか思い出せるようにする。ここが最優先 |
| 電話かLINEのボタン | ◎その場で押せる連絡手段を1つだけ |
| 何をしている人か1行 | あとで見返したときに用件が分かる |
| 会社沿革・実績一覧 | その場では要らない。下にスクロールした人だけが見ればいい |
この表を見せると、ほぼ必ず「実績も入れたい」と言われます。気持ちはすごく分かるんですよね。私だって、自分の作ったものは全部並べたい。ただ実績は、思い出してもらったあとに効くものです。順番を逆にすると両方すべります。
2紙をやめる必要はない
全部NFCに置き換えたい、という相談も来ますが、たいてい「両方」を勧めています。

NFCと紙の名刺を併用してQRコードも載せた形
相手が年配だったり、機種が古かったり、そもそもNFCを切っていたりする。かざして反応しなかったときの気まずさは、名刺交換という場面ではかなり致命的です。
反応しないとき、相手はまず自分のスマホを疑います。あの申し訳なさそうな顔は、店でもよく見ます。こちらが渡したもので相手に気を遣わせた時点で、名刺としては負けだと思っています。
iPhoneはXS以降ならアプリを入れなくても読めます。それでも、分厚い手帳型ケースや、カード入れに入った金属板が間に挟まると素直に反応しない。Androidは設定でNFCをオフにしたままの人が普通にいます。
紙に小さくQRコードを載せて、NFCは補助にする。この形が一番事故りません。うちのカードもそうしています。
ちなみにカードの寸法はCR80、クレジットカードと同じ大きさです。QRを載せる余白は思ったより少ない。小さくしすぎて読み取れないやつを一度作りました。あれは印刷してから気づくので、けっこうしんどいです。届いた箱を開けて、その場で全部使えないと分かる。あれはもう味わいたくないですね。
3配ったあとに効いてくる設定
地味ですが、ここで差が出ます。

連絡先保存・あとから編集・開封数という配ったあとに効く設定
1つ目、連絡先の保存。開いたページから電話帳に登録できるようにしておくと、相手の手間が1回分減ります。「あとで登録しよう」は、まず登録されません。自分がそうなので分かります(笑
2つ目、あとから中身を変えられること。番号や肩書きが変わっても、カードを配り直さなくて済む。物理カードに情報を焼き込むと、この利点が消えます。
そもそもNFCタグに入る容量は数百バイトしかなくて、プロフィールを丸ごと詰めるには足りません。タグにはURLだけ書いて、中身はサーバー側に置く。ここは、もう答えが出ています。
3つ目、開かれた回数を見られること。何枚配って何回開かれたかが分かると、渡し方を改善できます。渡すときに一言添えるかどうかで、開封率はけっこう変わります。
その一言も、「かざしてみてください」より「この中に料金表が入ってます」のほうが開かれる。用がある人しか開かない、というだけの話ではあるんですけど。
4うまくいかなかったこと
凝ったアニメーションを入れたことがあります。開いた瞬間に名前がふわっと出るやつです。

凝ったアニメーションで相手を待たせてしまった失敗
夜中に一人で秒数をいじっていた時期がありました。0.8秒、0.6秒、やっぱり0.4秒。画面の中では、たしかに気持ちよかったんです。
現場で試したら、アニメーションが終わるまで相手が待たされるだけでした。しかも回線が悪い場所だと、その待ち時間に離脱する。すぐ消しました。あの夜は何だったのか、と。
秒数を詰めて残す案も一度は考えました。1秒なら許容範囲だろう、と。やめた理由は、その1秒を守る保証がどこにもないからです。電波の弱い場所では1秒が3秒になる。相手の回線はこちらで選べません。
音声で自己紹介が流れる版も作りましたが、これは場所を選びます。静かなオフィスでいきなり音が出るのは事故です。いまは再生ボタンを置いて、押した人だけが聞ける形にしています。
専用アプリを入れてもらう案は、最初から捨てています。名刺交換の場でアプリを入れる人はいません。ブラウザで開けること。ここだけは譲らない条件にしています。
手が込んでいるものほど外れます。これは毎回、忘れたころにまた学び直しています。
5本命はたぶん、画面の外にある
NFC名刺そのものは、もう珍しくありません。差がつくのは、かざしたあとの10秒をどう設計するかだけです。

かざされたあとの10秒をどう測るか考えているところ
ただ、その10秒が効いているかどうかを測る方法を、私はまだ持てていません。開封数は取れます。でも「思い出してもらえたか」は数字になりません。ここが今いちばん引っかかっているところで、正直、少し怖い部分でもあります。測れないものを「効いています」とは言いたくない。直った理由が分からないまま端末をお返しするのと同じですから。
画面の小細工より、渡すときの一言を練ったほうが効いている気もしています。だとすると、私が夜中に詰めていた場所は全部おまけです。確証はまだありません。
発注ボタンを押す前に、一度だけやってみてほしいことがあります。立ったまま、片手で、自分のスマホにかざす。座って眺めるのと、まるで別物に見えます。それだけで削るべきものが半分見えます。それでも迷ったらお問い合わせから聞いてください。実物は業種別の制作事例で触れます。うまくいかなかった話のほうが、たぶん役に立つと思うので。
その「渡すときの一言」は、いま何パターンか試している最中です。開封率が動いたかどうかは、動かなかった場合も含めて報告します。
たった10秒のために、今夜もまだコードを触っています。
この記事を書いた人
NextCode(沖縄県宜野湾市)は、iOSアプリ・ホームページ/LP・NFCデジタル名刺・AI業務自動化を作っている開発スタジオです。 ここで書いているのは、実際に作って公開したものと、その過程で詰まったことだけです。
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