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開発事例

アプリを配ると、9割の家に届かない ―「ゆいタップ」

アプリを配ると、9割の家に届かない ―「ゆいタップ」

使ってもらえないものを作る自由は、こちらには無いんです。

自治会をデジタルにしたい、という相談は前からありました。話を聞くたび、同じところで止まります。

ゆいタップの画面

「アプリを入れてもらう」の部分です。

アプリを配ると、9割の家に届かない ―「ゆいタップ」を4コマ漫画にしたもの

アプリを配ると、9割の家に届かない ―「ゆいタップ」を4コマ漫画にしたもの

入れてもらう、と口で言うのは簡単です。じゃあ実際、何割の家に入るのか。作りはじめる前に、そこだけ調べました。

1先に、うまくいかなかった数字を見た

総務省の実証事業で、アプリ配布方式の世帯登録率は12.9%でした。浦添市の事例にいたっては1.2%です。

先に、うまくいかなかった数字を見たを表すイラスト

先に、うまくいかなかった数字を見たを表すイラスト

10軒に1軒。良くて、です。

この数字を見た時点で、企画を1回止めました。うちが作ったら数字が変わる、と考える根拠が無かったからです。

周辺の数字も、あまり明るくありません。沖縄市の自治会加入率は46.1%から27.7%まで落ちています。役員の約7割が70代以上。

そして自主防災組織のカバー率は42.4%で、全国最下位です。台風が毎年来る場所で、です。

つまり、いちばん届いてほしい世帯ほど、アプリという入口の外側にいる。ここを飛び越える方法を先に決めないと、機能をいくつ足しても意味がないと思いました。

入口を何にするかで、必要な手順がここまで変わる

区民がやることアプリ配布方式ゆいタップ(NFCカード)
ストアを開いて検索する必要不要
ダウンロードする必要不要
アカウントを作る必要不要
パスワードを覚える必要不要
機種変更のとき引き継ぐ必要不要(カードは同じ)
実際に届いた世帯12.9%(浦添市は1.2%)配った枚数がそのまま入口

2アプリをやめると、何が要らなくなるか

区民全員にNFCカードを配ります。カードには1枚ずつ違うURLを書き込んであります。

アプリをやめると、何が要らなくなるかを表すイラスト

アプリをやめると、何が要らなくなるかを表すイラスト

スマホにかざす。自分専用のページが開く。それだけです。

上の表のとおり、消えた手順は5つあります。ダウンロード、検索、アカウント作成、パスワード、機種変更時の引き継ぎ。

この5つは、機能ではありません。全部、脱落するポイントです。

70代の役員が、80代の区民に電話で説明する場面を想像してみてください。「ストアを開いて」の時点で、もう長いんですよね。

「かざしてください」なら、電話で最後まで言い切れます。

画面のほうも、ボタンを大きく、文字を大きくして、音声読み上げを入れました。読み上げは、目の問題だけでなく「読むのが面倒」への対策でもあります。

3既読が見えると、紙の枚数が減る

電子回覧板には、既読と確認率の集計を付けました。誰が見たかが役員側に出ます。

既読が見えると、紙の枚数が減るを表すイラスト

既読が見えると、紙の枚数が減るを表すイラスト

これは監視のためではなく、紙を減らすためです。

全戸に紙を回す運用は、全員がデジタルにならない限り終わりません。でも「未読の世帯にだけ紙を持っていく」なら、初日から枚数が減ります。

デジタルに移行しきる、を目標にしていません。混ざったまま回る形にしました。

行事の出欠もワンタップです。集計表を作る作業が消えるので、効果が出るのは区民より役員の側です。

4防災の画面を、別に作らなかった

災害時の安否確認ボードは入れました。ただし、平時の回覧板と同じ画面に置いています。

防災の画面を、別に作らなかったを表すイラスト

防災の画面を、別に作らなかったを表すイラスト

防災専用のモードを作ると、使い慣れていない画面を、いちばん慌てている日に開くことになります。

毎月なんとなく触っている画面のボタンが1つ増えるだけ、という形にしたかった。使い慣れが、そのまま防災力になると考えました。

未回答の世帯が一覧で残るようにもしてあります。安否確認は、返事が来た人を数える作業ではなく、返事が来ていない家を探す作業だからです。

5正直に言うと、まだ試されていません

ここまで書いておいてなんですが、この仕組みはまだ本番の災害を経験していません。講演会でデモを見てもらって、与儀・泡瀬の自治会の方に関心を持っていただいた段階です。

正直に言うと、まだ試されていませんを表すイラスト

正直に言うと、まだ試されていませんを表すイラスト

6ヶ月の無償パイロットを提案しています。KPIは、安否確認訓練の回答率70%と置きました。

12.9%を見て設計を変えたのに、こちらの数字を出さないのはずるいので、先に置いておきます。

70%に届かなかったときも、その数字は隠しません。届かなかった理由のほうが、たぶん次に効きます。

カードを配る方式にも弱点はあります。カードを失くした人がいたら、再発行の手間はアプリの再インストールより重いです。そこはまだ、うまい答えを持っていません。

作ったものは制作実績に並べています。ゆいタップの詳細には、行政向けの提案資料も置いてあります。

自治会や地域の運営で似たことを考えている方がいたら、こちらから声をかけてください。数字の話から始めましょう。

この記事を書いた人

NextCode(沖縄県宜野湾市)は、iOSアプリ・ホームページ/LP・NFCデジタル名刺・AI業務自動化を作っている開発スタジオです。 ここで書いているのは、実際に作って公開したものと、その過程で詰まったことだけです。

お問い合わせフォームは24時間受け付けています。

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